20200622所感

新型コロナウイルス感染症の緊急事態解除宣言が5月25日に発出されてからまもなく1ヶ月となる。日々の慌ただしさの中にあって、もう1ヶ月経つのかと驚きの感情が強い。

仕事柄、自動車での移動が多いので、道路の交通状況から感じ取れるのは、やはり緊急事態の解除が宣言されてから明らかに交通量は緊急事態宣言発出中の時よりも増加していることであろう。朝夕の通勤・通学送迎時間や休日の近郊間移動による交通量は目に見えて多くなった。自転車通学の高校生を見かける頻度が日を追うごとに増え、今では嘗てあった日常が徐々に戻りつつあるような実感を覚えるまでになった。

だが「嘗てあった日常」が本当に戻ってきたのかといえばそうではない。

仕事の合間に立ち寄るコンビニでは、入店する客のほとんどがマスクを着用しているし、ランチに入った飲食店では手指のアルコール消毒を求められるし、道行く人々、自動車を運転するドライバー、視認し得る多くの人々が感染拡大防止のための策を講じている様子がそこにはある。緊急事態宣言解除となってもなお、我々の社会は「目に見えない脅威」と対峙し、未だ根本的な対処を見いだせない中にあっても日々の暮らしを維持しようとする思いが行動となって表れているのではなかろうか。

緊急事態宣言発出中もそうであったが、各都道府県知事による感染拡大防止に向けた要請に従おうが拒絶しようがその一切に罰則はなく、それでもこの国に暮らす人々の多くは自発的に感染拡大防止に努めてきた。これを日本人論であるとか精神論といった類で論じるつもりはないが、何にせよ我々は結果として、緊急事態を解除できるにまで感染拡大を防止することができ、以って医療機関を守ったことは個々人としての努力を讃えても良いと思うし、医療従事者への負担軽減に繋がったのなら嬉しい限りだ。

もちろん、これによって経済は大きく傷ついた。生活に支障をきたす世帯、やむなく休業や廃業を選んだ事業主、生活が一変してしまった人もいれば、コロナ騒動から全く影響を受けていない人もいる。実は私も現状においてほぼ影響を受けていない。Twitterの相互フォロワーさんの一部の方々がテレワークを始めたり、時差出勤していたり、出勤日減少といった影響が出ている様子をタイムライン上で拝見してはいたが、ついぞ私や身近な人には、そういった目に見えてわかる変化は無かった。しかしながら社会全体として、それでも一概には言えないが、社会の空気として経済活動の回復を果たせない閉塞感のようなもの、自粛による萎縮が作用してしまっているかのようで、精神的な安定感を得ることのできる担保のようなものを我々はまさに欲しているのである。

既存の感染症と異なり、この感染症に対してはいまだ特効薬やワクチン等の開発には至っておらず、第二波、第三波の感染拡大リスクへの恐れが今後も続く。そうした中なか先日18日、安倍首相は会見で「感染リスクをコントロールしながら経済を回していく」との方針を示した。その具体策として「クラスター対策の強化」「検査体制の強化」「ポストコロナの未来を描いていく」大きくこの3点を挙げた。

この感染症を克服するまで嘗てあった我々の日常はそう簡単には戻ってこない。しばらくの間、この感染症とともに生きていくことを余儀なくされる。そうした新しい生活様式は冒頭に述べたとおり、もう既に多くの人々が理解しているところであり、マスク着用という行動変容ひとつ取っても、感染「しないため」ではなく感染「させないため」のマスク着用という意識の転換が根付いている。フランスの経済学者・思想家 ジャック・アタリ氏はETV特集「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」の中で「利他主義は最善の合理的利己主義」内容まとめ参照先と論じていた。利他的であるということは、ひいては自分の利益になるのであって、少なくとも3つの密に該当するであろう場所において意識的にマスク着用を心がけている人は、他人への感染防止のために着用した行為が社会全体への感染拡大防止に寄与し、巡り巡って自身を守っている行為と同義である、という理論にたどり着ける訳である。こうした行動変容こそがポストコロナ時代を生きていくためのヒントとなるのかもしれない。

このように危機管理が全面に出てくる新しい時代にあって、先日、厚生労働省が提供を開始した「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」はマスク着用と同様「利他主義は最善の合理的利己主義」という考えに合致するツールであると考える。既に諸外国ではこのアプリに似たツールを利用して国民の感染拡大防止に努めているが、我が国においてはプライバシーの保護や私権制限の忌避が重要視されすぎるがあまり、個人や位置情報は特定されず、また陽性者による自発的な登録によるものであって、政府が一元的に情報を管理する諸外国にあるような中央集中型ではなく、端末同士のBluetoothを利用した分散型であり、普及が進むほど効果が得られるというもので、さっそく私もスマートフォンにアプリをインストールした。前述通り濃厚接触を判断するためにBluetoothが用いられるのだが、イヤホンなどの接続に使われるものではなく、「Bluetooth LE(Low Energy)」と呼ばれる、非常に消費電力の低い通信方式によるものであって、実際に電池消費量ランキングを確認すると…う~ん、Twitterでこんなに電池使ってるのか…Twitterやめたほうがいいのかな?wなどという感想を抱いた。それだけこの接触確認アプリの電池消費量は少ないので安心している。

アプリ利用者へのインセンティブについて、「濃厚接触の有無を確認できる」というだけで十分な気もするが、先日放送された「BSフジLIVE プライムニュース」で佐藤正久 前外務副大臣が「濃厚接触の通知が来たら優先して検査してもらえるような見返りがあれば良い」との発言があり、それも一つの手だなと思った。

新型コロナウイルスが我が国にとって黒船であるか否か、急激な変化についていくことの難しい日本人気質のようなものが邪魔をして、もう少しゆっくりとした変化にしか順応できない、などと嘆く暇は無いのかもしれないけど、流動的な世界の動きに即応できる国の制度に変更するためには国民自身も変わっていかなければならない、ということはもうきっと多くの国民が新型コロナウイルスの感染の脅威によって気づいてきたのかもしれない。コロナがもたらす正副作用の両翼を見定めながら、きっと社会がより良い方向に進んでいくならば、この感染症により命を落とした方々の供養になるだろうし、そのためにも可能な限りの努力と協力はしていきたいし、ウイルスからの克服、そして収束の日の到来を願いながら、今日はこのあたりで。

まぁ、個人的にはコミケ参加できる日をその日としたい気分でいる。逆三角形の神殿へと行列をともに進める一般参加者の人たちと「密です!密です!」とか冗談言い合いながらリストバンド付けた手を高々にあげて会場に吸い込まれたい。いつか必ず!

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高橋キノエネのーと

Twitterの限られた文字数では伝えきれないこと、言いたいことを気ままに述べていく個人ブログです。