20200920所感

ここ数日、仕事から帰り、家事などの諸用を済ませたのちの寝るまでの時間、TVアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』全13話を観ていた。

御存知の通り、この作品は2018年1月よりテレビ放映されていたもので、制作は京都アニメーション。もうここ数年は私の不精により、アニメヲタクを自称していながら新作アニメを観ることなく時間が過ぎ去ってしまう残念なことをしてしまっており、この作品もまた、そうした未鑑賞なアニメの一つとなってしまっていた。けれども、近いうちに必ず観るんだという強い思いは常にあって、諸事情で二度にわたって公開日が延期となった『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』がいよいよ公開されることが決定し、何が何でも劇場版を劇場で観るために、まさに寝る間を惜しんでTVシリーズを一気に観たという訳である。実に濃厚な2020年9月となったものである。

TVシリーズはTVアニメとは思えない緻密で繊細で上質なアニメーション作品で、例えば主人公であるヴァイオレットちゃん(親バカなホッジンズ目線で彼女を見てしまう時があるw)の風で靡く長髪の一本一本にまで丁寧に描かれていたり、人との出会いを通じて成長していく彼女の表情やしぐさの変化に至るまで、昨今の一般的なTVアニメではなかなか見ることのない高品質さを保っていて、さらにそこへ、キャラクターボイスを務める石川由依さんの演技が加わって、この上ない素晴らしい作品として私は高く評価したい。

未放送話と外伝もネット配信で鑑賞した。どれも涙なしでは観ることのないストーリーで、ヴァイオレットちゃんの人生譚であると同時に、彼女と出会った人々ひとりひとりの人生譚でもあり、本当に美しかった。



【ここから一部ネタバレあります。】



そしてついに劇場版は公開された。

日曜日に観に行くつもりでいたので、劇場WEBサイト会員ページにて先行購入が可能となる二日前に無事に座席を確保。そして本日、万感の思いとともに観に行ってきた。

『sincerely』

冒頭、黒の背景色に白文字でテロップが出た。もうそれだけで涙腺が氾濫危険水位に達していた。

TVシリーズをまだ鮮明に覚えていることもあってか、映し出されたお屋敷が第10話に登場する川澄綾子さん(が演じる当主と娘のアン)が住む屋敷だということにすぐ気づいたし、電話の受話器や暖炉の上の写真からすぐに察することはできた。すなわち、観客が最も知りたい物語は、作品冒頭の時間軸では既に確定している過去の出来事であって、私達はその確定した事実をこの先、いかようにも突きつけられるんだという暗示を受けたのである。

この瞬間、予感はあった。ヴァイオレットちゃんとギルベルト少佐はどんな形であれ再会を果たすのだと。

まるで運命の糸を手繰り寄せては緩ませ、複雑に絡まったものを優しく解いていくように、静かに激しく物語は展開する。

最後の場面。顔をくしゃくしゃにして涙を流すヴァイオレットちゃんに私もマスクがびちょびちょになるまで泣いていた。劇場内のいたるところからすすり泣く声が聞こえる。

穏やかに、ときに荒々しく打ち寄せる波。重たそうな雲で遮られた夕陽。

あぁ、こんなにも美しい光景を本当に観てしまってよいのだろうか。

『道しるべ』

茅原実里さんが紡いだ歌詞が彼女自身の歌声に乗せて世界に響く。

エンドロールになっても感動は続く。アニメファンはあの事件で亡くなったクリエイター達の名前を胸に刻み込んでいる。彼らの名前がクレジットで流れてきた瞬間、さらなる感謝と敬意が湧き上がってきた。


人に思いを伝えるということは難しい。

どんなに丁寧な言葉を並べても、どんなに感情を込めて発しても、お互いが歩み寄らないと思いを推し量ることさえ難しくする。

「愛している」を知るためにドールとして成長するヴァイオレットちゃんを通じて、思いを伝える大切さ、思いを汲み上げ表現することの尊さ、他にも得たことは余りある。


うまく言葉に出来ないので、また劇場に行こうと思う。実は3月に購入したムビチケを今日は使わなかった。既に二度は観ようと決意していたのである。

この作品に携わった人々に、心からの「ありがとう」と伝えたい。


最後に。

まずは1回観に行って、率直に素直な感想をもう一つ述べておきたい。

極めてセンシティブな事。

エンドロールが終わって、ワンカットある。

思わず薄い本を所望いたしたくなったのは言うまでもない。

ヴァイオレットちゃん、きっと様々な「愛している」の形を学んできただろうからね。

そういった感情を持ち得ているのかどうかは判然としないけど、薄い本で読みたい衝動は大いにあって、なんかごめんなさい、駄文が更に駄文となる形になってしもうた。

私は4連休とは無縁の生き方してますので、寝ます。

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